2026.10.17 | 読了 約5分
とんぼが「勝ち虫」と呼ばれる理由|武将に愛された縁起の意匠

秋の空をすいすいと飛ぶとんぼ。じつはとんぼは、昔の人にとって縁起のよい虫でした。前にしか進まない飛び方から「勝ち虫(かちむし)」と呼ばれ、戦国時代の武将たちは、兜や刀の鍔(つば)などにとんぼの意匠を取り入れたと伝わります。この記事では、とんぼが勝ち虫と呼ばれる理由と、武将たちとのつながり、そして今の暮らしでとんぼ柄を楽しむヒントをご紹介します。

とんぼが「勝ち虫」と呼ばれる理由
とんぼは、空中でぴたりと止まったり、すばやく方向を変えたりと、とても器用に飛びます。それでも、後ろ向きに飛ぶことはほとんどありません。そのため、「前にしか進まず、決して退かない」虫として、「勝ち虫」と呼ばれるようになったとされています。
退くことを嫌った武士にとって、とんぼの姿は理想的なものに映ったのでしょう。勝負に勝つ、前へ進み続ける、という願いを込めて、とんぼは縁起のよい虫として大切にされてきました。
とんぼの古い呼び名「あきつ」
とんぼは、古くは「あきつ(秋津・蜻蛉)」と呼ばれていました。日本の古い呼び名のひとつ「秋津島(あきつしま)」も、このとんぼに由来するといわれます。『日本書紀』には、神武天皇が国の姿を見渡して、とんぼが交わり連なっているような形だ、と語ったという話が伝わっています。
また、雄略天皇の腕を刺したアブを、とんぼがすぐにくわえて飛び去ったという話も伝えられています。日本では、とんぼはずっと昔から、天皇や国の物語とともにあった特別な虫だったのです。
戦国武将ととんぼの意匠
戦国時代には、とんぼの意匠がさまざまな武具に取り入れられたと伝わります。
兜や鍔、陣羽織に
兜の飾りや、刀の鍔(つば)、鎧、陣羽織などに、とんぼのデザインが使われた例が知られています。戦場に向かう武将たちは、「勝ち虫」に勝利と前進の願いを託したのでしょう。

本多忠勝の名槍「蜻蛉切」
とんぼにまつわる武具として有名なのが、徳川家康に仕えた武将・本多忠勝の槍「蜻蛉切(とんぼきり)」です。槍を立てておいたところ、飛んできたとんぼが穂先にとまった瞬間、まっぷたつに切れてしまった――。それほど切れ味が鋭かったことから、この名がついたと伝わります。
勇猛で知られた本多忠勝は、生涯数多くの戦に出ながら、大きな傷を負わなかったともいわれます。とんぼの名をもつ槍は、そんな忠勝の強さの象徴として語り継がれてきました。
季節を告げる虫としてのとんぼ
とんぼは、勝ち虫としてだけでなく、季節の移ろいを告げる虫としても、日本人に親しまれてきました。
秋の季語「とんぼ」
俳句の世界では、とんぼは秋の季語とされています。稲穂が実る田んぼの上を、赤とんぼが群れになって飛ぶ景色は、日本の秋の原風景のひとつです。童謡「赤とんぼ」に、夕焼けの景色や幼いころの思い出を重ねる方も多いのではないでしょうか。
田んぼと実りの使い
とんぼは田んぼの水辺で生まれ、稲の害虫を食べてくれる益虫でもあります。豊かな実りの季節に姿を見せることから、とんぼは五穀豊穣を感じさせる虫でもあったのでしょう。稲作とともに暮らしてきた日本人にとって、とんぼは身近な存在でした。
お盆ととんぼ
地域によっては、お盆の時期に飛ぶとんぼを、ご先祖さまの使いとして大切にする言い伝えもあります。この時期にはとんぼをとらないように、と言われて育った方もいるかもしれません。
勝負に勝つ強さを表す一方で、季節の移ろいや、ご先祖さまとのつながりも感じさせる――とんぼは、日本人の心にさまざまな形で寄り添ってきた虫なのです。
暮らしの中のとんぼ柄
武士の時代が終わっても、とんぼの意匠は暮らしの中で愛され続けています。
- 浴衣や手ぬぐい:夏から秋にかけて、季節感のある柄として人気
- 印伝(いんでん):鹿革に漆で柄をつける山梨の伝統工芸。とんぼ柄は「勝ち虫」として定番の柄のひとつ
- 小物やアクセサリー:財布や名刺入れ、帯留めなど
- 子どもの着物:前へ進む、たくましく育つようにとの願いを込めて
とんぼ柄の小物は、勝負ごとに臨む方へのお守りがわりにもなります。たとえば、受験を控えた方、新しい仕事に挑戦する方、スポーツの試合を控えた方などへの贈り物にぴったりです。「前へ前へ、進んでいけますように」とひとこと添えれば、応援の気持ちがまっすぐ伝わります。

とんぼ柄を贈るときのヒント
とんぼ柄の贈り物は、季節を問わず使えるのも魅力です。
- 就職・転職・昇進のお祝い:名刺入れやペンケースなど、仕事で使える小物を
- 受験の応援:ペンケースや手ぬぐいなど、毎日持ち歩けるものを
- 新しい挑戦への応援:独立・開業される方には、身につけられる小物を
- 父の日や男性への贈り物:渋さのある印伝の小物は、男性にも喜ばれやすい
柄の意味を知っていると、贈り物にストーリーが生まれます。とんぼが勝ち虫と呼ばれた理由を、ぜひ話してあげてください。
まとめ
- とんぼは前にしか進まないことから「勝ち虫」と呼ばれ、縁起のよい虫とされてきた。
- 日本の古い呼び名「秋津島」は、とんぼ(あきつ)に由来するといわれる。
- 戦国武将は、兜や鍔、陣羽織などにとんぼの意匠を取り入れたと伝わる。本多忠勝の槍「蜻蛉切」も有名。
- とんぼ柄の小物は、受験や就職、新しい挑戦を応援する贈り物にぴったり。
むすびのひとこと
迷ったり立ち止まったりする日があっても、とんぼのように、少しずつでも前を向いて進めたらすてきですね。だれかの背中をそっと押したいときに、とんぼ柄を思い出してください。ご縁、むすんでおきますね。
en:musubiのとんぼ柄ギフト
en:musubiでは、とんぼ柄の印伝の小物など、勝ち虫にちなんだ贈り物をご用意しています。新しい挑戦を応援する贈り物にどうぞ。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
明日が、すこし楽しみな一日になりますように。



