日本各地の縁起物と、その土地の物語を。

2026.10.17 | 読了 約6分

金沢の金箔と加賀藩前田家|金が縁起物とされてきた理由

古い町並みの格子窓の向こうから差す光の中、金箔をあしらった漆の器や小皿がきらめいている情景

金箔をあしらった器や、金箔入りのお菓子。華やかな金の輝きは、お祝いの席にぴったりですね。じつは、国内で作られている金箔のほとんどは、石川県金沢市で生まれています。その歴史は、戦国時代から江戸時代にかけてこの地を治めた加賀藩の前田家と深く関わっているとされます。この記事では、金沢の金箔の歩みと、金が縁起物とされてきた理由、暮らしで楽しむ金箔の工芸品についてご紹介します。

金箔が貼られた漆の器が光を受けて輝く様子
金箔の華やかな輝き

金沢は金箔の町:国内生産のほとんどを担う

金沢市の資料によると、金沢では現在、国内で作られる金箔の98〜99%以上が作られているとされます。銀箔なども含め、日本の箔づくりを支えているのが金沢なのです。

金箔は、金に少量の銀や銅を加えた合金を、薄く薄く打ちのばして作ります。その厚さは、1万分の1ミリほどともいわれます。向こう側が透けて見えるほどの薄さで、指で触れると溶けるように消えてしまいます。この繊細な箔を作り出すのが、金沢の職人たちの技です。

金沢の町を歩くと、金箔を使った工芸品のお店や、金箔貼りの体験ができる工房が並び、まさに「金箔の町」といった雰囲気です。

前田利家と金箔:加賀藩とのつながり

箔の製造を命じた文書

金沢の金箔の歴史は、加賀藩の藩祖・前田利家にさかのぼるとされます。1593年(文禄2年)、利家が金箔・銀箔の製造を命じた文書が残っているといわれています。ただし、それ以前から金沢には箔をつくる職人がいたと考えられています。

江戸時代の取り締まりと、ひそかに守られた技

江戸時代に入ると、江戸幕府は金や銀の流通を厳しく管理するようになりました。17世紀の終わりごろには、金箔は江戸、銀箔は京都でしか作ることが許されなくなったとされます。

それでも加賀藩では、寺社や城の修理などに使う箔の技術が、さまざまな形で受け継がれていったといわれます。前田家は、工芸や文化を大切にした大名家としても知られ、加賀の地には多くの職人が集まりました。

明治以降、日本一の産地へ

明治時代になり、幕府による規制がなくなると、金沢の箔づくりは大きく発展します。金沢の気候や水質が箔づくりに適していたこと、職人によって箔を打つ機械が考え出されたことなどから、金沢は全国一の箔の産地へと成長していったと伝えられています。

職人の工房で金箔を一枚ずつ扱う手元
職人の手で生まれる金箔

金が縁起物とされてきた理由

変わらない輝き

金は、空気や水にふれても錆びたり色が変わったりしにくい金属です。何年たっても美しい輝きを保つことから、「永遠」「不変」の象徴とされてきました。結婚50年目を「金婚式」と呼ぶのも、ふたりの絆が金のように変わらず輝き続けるように、という願いが込められているといわれます。

豊かさと魔除けの象徴

まばゆい光を放つ金は、古くから富や豊かさの象徴でした。また、光り輝くものには悪いものを遠ざける力があると考えられ、仏像や寺社の装飾にも金が使われてきました。金色の仏像や金色の建物は、人々に特別なありがたさを感じさせてきたのでしょう。

お祝いの席の金

お正月のお屠蘇やお祝いのお酒に金箔を浮かべるのも、華やかさとおめでたさを添えるためです。金箔入りのお酒やお菓子は、お祝いの席や贈り物として親しまれています。

金沢の町で金箔にふれる

金沢を訪れたら、金箔の文化に直接ふれてみるのもおすすめです。

金箔の工芸館や工房

金沢には、金箔の歴史や道具、箔打ちの工程を紹介する施設があります。金沢市立安江金箔工芸館では、金箔づくりの道具や、金箔を使った美術工芸品を見ることができます。職人の技がどれほど繊細なものかを知ると、ひとつひとつの工芸品がいっそう愛おしく感じられます。

金箔貼り体験

町のあちこちの工房では、お箸や小皿、手鏡などに自分で金箔を貼る体験ができます。息を吹きかけただけでふわりと舞い上がってしまう金箔を、竹のピンセットでそっと扱う作業は、思った以上に繊細です。自分で仕上げた品は、旅のよい思い出になりますね。

茶屋街の町並みとともに

ひがし茶屋街など、古い町並みが残る地区には、金箔の工芸品や金箔をあしらったお菓子のお店が並んでいます。格子戸の続く町並みを歩きながら、金箔の輝きを探してみてください。

暮らしで楽しむ金箔の工芸品

金箔は、特別な日だけでなく、ふだんの暮らしの中でも楽しむことができます。

  • 金箔の器や箸:漆器に金箔をあしらった器や、金箔入りの箸など。食卓が華やかに
  • 金箔入りのお菓子やお茶:羊羹やカステラ、お茶に金箔を浮かべて
  • 金箔のアクセサリーや小物:手鏡や名刺入れ、ブローチなど
  • 金箔の化粧品:あぶらとり紙は、箔づくりの過程で使われる紙がもとになったといわれます

贈り物に選ぶなら

金箔の工芸品は、おめでたい場面の贈り物にぴったりです。

  • 結婚祝い:金箔をあしらったペアの器やお箸
  • 長寿のお祝い:傘寿や米寿など、金色にゆかりのある長寿祝いに
  • 開業・昇進のお祝い:華やかな金箔の小物
  • お正月のご挨拶:金箔入りのお酒やお菓子

贈るときに「金沢の職人さんが手がけた金箔なんですよ」とひとこと添えると、品物にまつわる物語まで一緒に届けられます。

金箔入りの和菓子と漆の小皿が並ぶ食卓
お祝いの席に金箔を

まとめ

  • 国内で作られる金箔のほとんどは、石川県金沢市で生まれている。
  • 金沢の金箔の歴史は、加賀藩の前田利家が箔の製造を命じた文書(1593年)にさかのぼるとされる。
  • 江戸時代の規制を経て、明治以降に日本一の産地へと成長したと伝えられている。
  • 金は「変わらない輝き」「豊かさ」「魔除け」の象徴とされ、お祝いの品に使われてきた。
  • 金箔の器やお菓子は、結婚祝いや長寿祝い、お正月の贈り物にぴったり。

むすびのひとこと

1万分の1ミリの薄さまで、何度も何度も打ちのばされて生まれる金箔。その輝きの奥には、受け継がれてきた職人さんたちの手の温もりがあるのですね。大切な方へ、そんな物語ごと贈ってみてください。ご縁、むすんでおきますね。

en:musubiの金箔ギフト

en:musubiでは、金沢の職人が手がけた金箔の工芸品や、金箔入りの名産品をご用意しています。お祝いの贈り物にどうぞ。

for you

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
明日が、すこし楽しみな一日になりますように。

縁
読みもの1本につき、印をひとつ。

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